マスターズの会場には、ほかの大会では見られない、独特の決まりがあります。
携帯電話は一切持ち込めず、バッグの大きさや椅子の形にも、細かな制限があります。
服装には明文化された規定こそないものの、長年培われてきた「品よく装う」作法が根づいています。
知らずに門の前で足止めされないよう、また一日を心地よく過ごせるよう、持ち込めるもの、装い、禁じられているものを、出発前に一度に整理しておきましょう。
持ち込めないもの
まず、会場に持ち込めないものから確認します。
携帯電話、ノートパソコン、タブレットなどの電子機器は、写真や動画を送信できる機器を含めて、終日、持ち込みが禁じられています。
カメラは、月曜から水曜の練習ラウンドに限って許され、木曜からの本戦では持ち込めません。
バッグ、リュック、ハンドバッグは、縦・横・奥行きのいずれかが10×10×12インチ(約25×25×30センチ)を超えるものは持ち込めません。
透明バッグである必要はありませんが、この寸法は守る必要があります。
椅子は、1人につき1脚まで。折りたためて、肘掛けのないものに限られます。肘掛け付きの椅子、固い椅子、脚の先が尖った椅子は持ち込めません。
そのほか、以下も禁じられています。
外部から持ち込む飲食物とクーラーボックス、あらゆる刃物・武器、ラジオやテレビ・録音機器、旗・横断幕・看板、ベビーカー、脚立、自撮り棒。
後述する金属スパイクの靴も、ここに含まれます。なお禁止品目は委員会の判断で追加されることがあり、入場時には手荷物検査が行われます。
携帯電話がない、という前提
この大会を語るうえで欠かせないのが、携帯電話の全面禁止です。
徹底ぶりは相当なもので、2026年大会では、かつて海外メジャーを制した選手が、練習日に携帯を持っていたために場内から退去させられています。
規則を破れば、退場のうえ、チケットを永久に失う可能性があります。
携帯がない前提で、いくつか備えておくと安心です。
まず、腕時計。
時刻を確かめる手段がなくなるため、時計は実用品になります。
次に、待ち合わせ場所。
同行の方とはぐれたときのために、集合場所を決めておきます。
会場でよく使われるのは、クラブハウス前の大きな樫の木です。
連絡が必要なときのために、コースの脇には備え付けの電話が用意されています。
入口の預かり所で携帯を預けることもできます。
写真については、本戦の日でも、クラブハウス前のファウンダーズ・サークルで、無料の記念撮影に応じてもらえます。
撮影後に渡されるカードから、後日オンラインで写真を入手できます。
服装に規定はない、しかし作法はある
服装について。
マスターズには、公に明文化された服装規定はありません。
とはいえ、何を着てもよいわけではありません。
会場には、長年培われてきた「品よく装う」という不文の作法が根づいています。
目安は、ゴルフ場や、あらたまった日曜の集まりに着ていくような装いです。
いわゆるスマートカジュアル、あるいはゴルフカジュアル。
オーガスタを象徴する緑と白を取り入れる人は多く、その配色は会場によくなじみます。
淡い春の色合い、たとえばネイビー、クリーム、ペールトーン、ギンガムやシアサッカーも、品よくまとまります。
避けたいのは、くだけすぎた装いです。
切りっぱなしのショートパンツ、スポーツウェア、ビーチサンダルは、この場にそぐいません。
デニムも、一般にはカジュアルに過ぎると見なされます。
華美な仮装や、揃いのチーム衣装も場違いです。
庭園での昼下がりの集いに、長い距離を歩く実用を足す。
そう考えると、ちょうどよい塩梅が見えてきます。
足元こそ、最優先である
装いのなかで、もっとも気を遣うべきは足元です。
理由は明快で、とにかく歩くからです。
コースは起伏が大きく、1日に6キロ前後、ホールを追ってまわれば、それ以上歩くことも珍しくありません。
見た目を優先して履き慣れない靴を選べば、午後にはその選択を悔やむことになります。
選ぶべきは、履き慣れた、滑りにくい靴です。
スニーカーや、歩きやすいローファーが定番です。
雨に強い素材であれば、なお安心できます。
ひとつ、明確な決まりがあります。
金属スパイクの靴は認められていません。
芝を傷めないための措置で、公式に禁じられた持ち込み品にあたります。
先の尖ったヒールも避けてください。
素足での入場も認められていません。
足元は、見た目よりもまず、一日を歩き抜ける実用で選ぶ。それが正解です。
四月の天気と日差しに備える
マスターズが開かれる4月のオーガスタは、朝晩と日中の寒暖差が大きいのが特徴です。
早朝はひんやりと冷え込み、昼を過ぎると20℃台まで上がることもあります。
一枚の服で過ごすより、脱ぎ着で調整できる重ね着が向いています。
薄手のセーターや、軽いジャケットがあると重宝します。
雨の可能性も、頭に入れておきたいところです。
会場では、マスターズのロゴが入った傘やポンチョ、レインジャケットが販売されています。
ただし傘はかさばるため、撥水性のある軽い上着を選ぶ人も少なくありません。
一日の大半を屋外で過ごすため、日差し対策も欠かせません。
つばのある帽子は、日除けとしても、装いの仕上げとしても役立ちます。
サングラスも、まぶしさをやわらげる実用品として、一つあると重宝します。
小物は、控えめで質のよいものを選ぶと、全体が引き締まります。
男女それぞれの、装いの目安
具体的な装いの目安を、簡単に挙げておきます。
男性は、襟付きのシャツ、たとえばポロシャツやボタンダウンに、チノパンやスラックスを合わせるのが基本です。
ベルトを締め、足元は清潔なスニーカーかローファー。
肌寒い日には、薄手のセーターやスポーツコートを重ねると、品よくまとまります。
暑い日には仕立てのよいショートパンツも許容されますが、スラックスのほうが、より落ち着いた印象を与えます。
女性は、サンドレスやゴルフドレス、あるいはブラウスにスコートや仕立てのよいショートパンツを合わせる装いが定番です。
足元は、歩きやすいフラットシューズやスニーカー、上品なサンダルを選ぶとよいでしょう。
色は、春らしい淡い色合いや、オーガスタの緑と白がよく映えます。
男女に共通して言えるのは、「歩くこと」を前提に選ぶことです。
どれほど装いが整っていても、歩けなければ、一日は台無しになってしまいます。
持っていくとよいもの
ここまでの装い以外に、持っていくと役立つものを挙げます。
双眼鏡は歓迎されており、遠くのプレーを追うのに重宝します。
椅子は、折りたたみの肘掛けなしのものを持参するか、現地で公式の緑色のマスターズ・チェアを購入する手もあります。
後者は記念品としても人気があります。
芝生に座ったり寝そべったりすることは認められていないため、椅子があると安心です。
そして、支払いの備え。
会場はキャッシュレスで、売店やショップでの支払いはクレジットカードかデビットカードのみです。
現金やモバイル決済は使えません。
クレジットカードを忘れずにご用意ください。
椅子をめぐる、ひとつの作法
椅子には、オーガスタならではの慣わしがあります。
朝のうちに、お気に入りのホールの観戦場所へ椅子を置いておくと、その場所が一日確保されるのです。
持ち主がコースを歩きに離れている間も、ほかの誰かがその椅子に座ったり、勝手に動かしたりすることはありません。
互いの信頼だけで成り立つ、暗黙の作法です。
16番グリーンや、アーメンコーナーといった人気の場所では、早い時間から椅子が静かに並びます。
ただし、ゲートが閉まったあとや、競技終了からしばらく経っても残された椅子は、置き去りの品として扱われます。
一日の終わりには、忘れずに引き上げてください。
当日を整える
服装は品と歩きやすさを両立させ、持ち物は最小限に。
携帯を手放し、必要なものだけを携える。
マスターズの一日は、そうして身軽に整えるほど、心地よく過ごせます。
※情報は2026年6月時点のものです。
服装の作法や持ち込みルール・禁止品目は変更される場合があるため、ご出発前に公式情報をご確認ください。
参考文献
- Masters Tournament Official, https://www.masters.com/
- The Augusta Chronicle/Golf Digest/Golfbreaks ほか(服装・持ち込みルール、2026年6月閲覧)
